第8回 地域と暮らしのゼロカーボン勉強会「消費から考えるゼロカーボン」

ゼロカーボン(カーボンニュートラル)に向けて一人ひとりが主役となるための勉強会。

第8回は「消費から考えるゼロカーボン」をテーマに、衣食住など日々の暮らしに欠かすことのできない「消費」の裏側に目を向け、自然環境への負荷、さらには気候変動につながることについても学び、心地良い暮らしについて考えました。

日時:2021年9月30日(木)18:30〜20:00
場所:白馬ノルウェービレッジ/オンライン(Zoom)
参加者:約70名(会場20名、オンライン50名)
  1. 開会
  2. 講演『エシカルという いま必要な新しいものさし』
    講師:末吉里花さん(一般社団法人エシカル協会)
  3. トークセッション『環境にも、私たちにも心地いい選択って?』
    ゲスト:
    末吉里花さん(一般社団法人エシカル協会)
    加藤ソフィーさん(自然派喫茶sol/白馬村議会議員)
    小松由紀子さん(POW JAPAN / tecala craft)
    西部冴子さん(衣類販売)
  4. お知らせ

開会

はじめに、今回の勉強会の進行を務めたPOW JAPANの鈴木瞳さんから、身近な暮らしに関係する「消費」について、問題を提起していただきました。

大量生産・大量消費が、動植物などの自然環境や途上国の労働環境と関係していることについて、なんとなく理解していても、どこから変えていけばいいのか、どうすれば解決できるのかという壁が大きく、難しさも感じてしまう人も多いと思います。

長野県に移住して、自然と調和した暮らしを営む人たちと接する中で、野菜を身近な有機農家から買ってみたり、自分で育ててみたりすることが心地良いことに気づきました。料理をしていて楽しいし、美味しく感じます。
また、野菜の旬を意識するようになり、時期外れの野菜は遠くから運ぶのにエネルギーをたくさん使っていることが気になったりもします。

消費からゼロカーボンを考えるために、エシカル協会の末吉里花さんのお話を聴いて、みんなで「エシカル」について学びましょう!

講演「エシカルという いま必要な新しいものさし」

2015年に一般社団法人エシカル協会を立ち上げ、代表理事を務めている末吉里花さんから、「エシカル消費とは何か、どのように暮らしに取り入れていくことができるか」ということをお話いただきました。

一般社団法人エシカル協会

エシカルとは英語で、直訳すると「倫理的な」という意味です。
一般的には、「法的な縛りはないけれども、多くの人たちが正しいと思うことで、人間が本来持つ良心から発生した社会的な規範」であると言えます。私たちが普及活動を行なう際の「エシカル」とは、根底には一般的な定義が流れているものの、特に「人や地球環境、社会、地域に配慮した考え方や行動」のことを指します。エシカルは形容詞ですので、様々な名詞と組み合わせることで、その意味は多様に広がります。例えば、「地域の活性化や雇用なども含む、人や地球環境、社会に配慮した消費やサービス」のことを「エシカル消費」と言います。(エシカル協会ホームページより引用)
日本には、エシカルという言葉が浸透するずっと前から大切されてきた「おたがいさま」「おかげさま」「もったいない」「足るを知る」という精神性を表す言葉があります。生産者と消費者の間に壁がある現代でも、私たちの暮らしが人や地球環境と繋がっていることは変わりません。私たちが、何を食べるか(食べないか)、何を着るか(着ないか)、お金をどう使うか(使わないか)によって生産者や地球環境に影響を与えることを忘れてはいけません。(エシカル協会ホームページより引用)

エシカル協会は、エシカルの本質について自ら考え、 行動し、変化を起こす人々を育み、 そうした人々と共に、エシカルな暮らし方が幸せのものさしとなっている持続可能な世界の実現を目指すことをミッションに掲げ、各種講座や講演など普及活動をされています。

講演では、末吉さんがエシカルの普及に努めることを決心した理由や、世界における様々な課題と私たちの日々の暮らしのつながり、海外の都市や企業の事例、生活者として私たちができることなどをお話いただきました。

コロナ禍で児童労働が増えているなど、目を覆いたくなる現実はたくさんありますが、影響を考えて良いものを選べるという幸せもあるので、「エシカル=幸せのものさし」ということを改めて感じました。

竹富島では、末吉さんにお話いただいたことをきっかけに子どもたちとビーチクリーン活動を始めましたが、ペットボトルなどプラスチック製品が漂着していることが多くあります。その現状を生産者・メーカーなどに知ってもらうことで、生産量を減らすことを考えてほしいと思いますが、どういったアクションをすれば良いでしょうか。

企業やブランドに向けて生活者から直接声を届けることもできるので、そういった活動を続けていくことが大切だと思います。

東京では便利さを追い求めて生活している人が多いと思いますが、白馬に移住して持続可能な暮らしを自然な形で実現できている人が多いと感じました。日本国内でも知らない・興味がないという人もいますが、都市部の人に知ってもらうためにはどうしたらいいでしょうか。

白馬のような自然豊かなところでは、都市部よりもエシカルな暮らしが進んでいると思います。都市部にいる人も自然に触れる時間を作ることで考えるきっかけが生まれたりするのではないでしょうか。

トークセッション「環境にも私たちにも心地いい選択って?」

地域の中でエシカルな暮らしをしながら、暮らしだけではなく仕事を通して社会との接点の中で取り組んでいる3名からお話を伺いました。

加藤ソフィーさん

白馬五竜スキー場のエスカルプラザ内で自然派喫茶solを営みながら、白馬オーガニックマーケットを主催したり、白馬村議会議員も務めています。

食を通じて持続可能なライフスタイルを提案したいという想いで、ベジタリアンやオーガニックを意識した食材選び・メニューづくりをしています。

「環境に優しい」ということを前面に出さずに、美味しさや見た目などで選んでもらうことを意識しながら、ビーガンやベジタリアンを通じて環境について考えるきっかけになればという想いで営業しています。気づいたり考えたりするタイミングは人それぞれだと思うので、興味を持って聞かれたら答えるという姿勢を大切にしています。

環境問題を考えるとき、あれはダメ、これはダメというように、いろいろなことを否定的に捉えてしまいがちですが、「良いものを選ぶ」というポジティブな考えで取り組めば無理なく、楽しく心地よいと感じながら続けられると思います。

こうして若い女性が飲食店や村議会議員として活動している白馬村には未来があると感じます。
エシカルも人に押し付けては上手くいかないので、自分がエシカルな選択を楽しんでいるという姿を見てもらい、共感してくれる人に深い話をするようにしています。

美味しい・楽しい・ワクワクするといったようなところから多くの人に興味を持ってもらえたら素晴らしいと思います。

西部冴子さん(あぐちゃん)

白馬村で衣類販売をしています。昔から服に興味がありましたが、以前は安い服をたくさん買っていて、ほとんど着ないまま捨ててしまった服もありました。

白馬に住みながらスノーボードやサーフィン、野菜づくりなどをしながら環境問題に興味を持つようになり、実家に帰った際に小さい頃から遊んでいた河原にゴミがたくさんあるのを見て、ショックを受けました。

インターネットなどでいろいろと調べたり人と話したりしているうちに、末吉里花さんの著書「はじめてのエシカル」に出会い、衣類販売の仕事を通じてできることについても考えるようになりました。

ブランドをステータスとして身につける人も多く、服自体に愛着を持ってもらえているかということも気になり、修理ができることを知らない人もたくさんいたので、商品を販売するときには破れたり壊れたりしてもリペアができるということと、長く愛着を持って来てもらえるよう想いを伝えています。

洋服は毎日身につけるものなので、食べ物と同じくらい身近で重要です。
アパレル業界でも世界的に持続可能なあり方にシフトしていますが、日本でも企業がもっと踏み出していけるように、生活者としても本当に必要なものかどうか買うときに考えて、エシカルな商品を選択したり企業に声を届けたりすることで後押ししていくことが大切だと思います。

オーガニックコットンやリサイクル素材を使用していることが表示されている商品もあります。新しいものを買うときには、どういうものを使ってどこでどうやって作られているかを知ることで、長く大切に使えると思います。

小松由紀子さん(POW JAPAN)

Protect Our Winters Japanの事務局を務めながら、植物性の材料や地元産の食材を使った安心安全なお菓子づくりをしたり、生理用の布ナプキンを自作する普及活動にも携わっています。

糸魚川市で生まれ育ち、スノーボードをきっかけにカナダに行き、ネイティブアメリカンの自給自足の生活を体験したり、自然に感謝して自然と共に生きることの大切さを学びました。

自分自身の身体の声を聴くことと、地球の声を聴くことを大切に過ごしています。何でも買える社会だからこそ、子どもたちにはプロセスを見せることを心がけていて、「これは本当に買わなくてはいけないのか。作れるものは自分で作ってみよう」という意識で暮らしています。

布ナプキンの草木染めに使う植物も生育環境や採取時期なども考えたり、お菓子づくりでも顔が見えて信頼できる生産者が育てた原材料を使ったり、そういった一つ一つのプロセスが丁寧であるほど愛情が湧いたり、美味しく感じたり、体も心も喜ぶと思うので、そういった部分を大切に生活しています。

この地域にはプロセスを大切にしながら暮らしている人がたくさんいて、プロセスを見せてもらうことでわかることがたくさんあり、知る喜びが増えることで選ぶものも変わってくると思います。
新しいものを買うのではなく、作ってみる・直してみる、知り合いと交換したりすることも暮らしに根付いていると感じます。

「買い手から作り手になる」ということは、自分でプロセスを経験することで「作ることの大変さ」を知り、適正な価格なども意識するようになります。コロナ禍で時間ができた人も多いと思うので、都心部の人にも楽しみながら作り手になっていくような機会があればいいなと思います。
自分の声を聴くということについては、社会との関わりを持ちながら活動を続けていく外向きの矢印だけでなく、自分の声を聴く内向きの矢印も大切にしてバランスを取っていく必要があると感じます。

自然に近い場所だからこそ、作り手と買い手が近く感じられ、身体の声も聴きやすいと思います。
自分にとって心地よい選択が環境にとっても良く、それがゼロカーボンに繋がっていくことを、今日の勉強会で感じて選択する人が増えてくれたら嬉しいです。

お忙しい中勉強会を開催したり参加してくれて、ありがとうございました。それこそがエンゲージド・エシカルなので、大きな一歩だと感じています。エシカルを進めていくためには、今日のイベントのように女性の活躍も大切になってきます。
“Progress over Perfection=完璧よりも前進を”という言葉がありますが、不完全な世の中で完全を求めると矛盾も生じやすいので、みんなで楽しみながら前進する、螺旋的に上に登っていくような活動を長く続けられればと思います。

お知らせ

次回は10月21日(木) 18:30から、アクティブ・ブック・ダイアローグ(ABD)という手法でサーキュラー・エコノミーに関する書籍をみんなで読んでみるABD体験会を予定しています。

第9回 地域と暮らしのゼロカーボン勉強会「アクティブ・ブック・ダイアローグ®で読む『サーキュラー・エコノミー』」
ゼロカーボン(カーボンニュートラル)に向けて一人ひとりが主役となるための勉強会。 第9回のテーマは「アクティブ・ブック・ダイアローグ®で読む『サーキュラー・エコノミー』」。 アクティブ・ブック・ダイアローグ®(ABD)という手法...

10月23日(土)には、「ジャパンEVラリー白馬」が開催されます。
今年から村民参加枠が設けられ、EV/PHEVで白馬五竜に行くと、EV普及アンバサダーステッカーがもらえます。また、クールチョイスフォーラムとして「白馬のゼロカーボンを考える」というテーマで、スイスのツェルマットの事例などを山田桂一郎さんにお話いただいたり、村長や地域の活動家にもご登壇いただく予定です。EV/PHEV試乗会も開催されます!詳しくはWebサイトをご覧ください。