ゼロカーボン(カーボンニュートラル)に向けて一人ひとりが主役となるための勉強会。
第9回のテーマは「アクティブ・ブック・ダイアローグ®で読む『サーキュラー・エコノミー』」。
アクティブ・ブック・ダイアローグ®(ABD)という手法を用いて、中石和良さんの著書「サーキュラー・エコノミー 企業がやるべきSDGs実践の書」を読んで、対話しました。
会場:白馬ノルウェービレッジ
参加者:20名(会場16名、オンライン4名)
*オンラインでは、リレー・プレゼン(発表)とダイアローグ(対話)の部分でご参加いただきました。
開会(チェックイン・オリエンテーション)
はじめに、ファシリテーターの堀井章子さんから、アクティブ・ブック・ダイアローグについてご説明いただきました。
アクティブ・ブック・ダイアローグ®(ABD)とは…
1冊の本を参加者全員で分担して読み、まとめて、対話する形式の読書法で、未来型読書法・参加型読書法とも言われています。
読書が苦手な人も、本が大好きな人も、短時間で読みたい本を読むことができ、発表や共有、対話といったプロセスを通して、著者の伝えようとすることを深く理解でき、能動的な気づきや学びを得ることができます。
また、グループでの読書と対話によって、一人ひとりの能動的な読書体験を掛け合わせることで学びはさらに深まり、新たな関係性が育まれる可能性も広がります。
今回の勉強会では、中石和良さんの著書「サーキュラー・エコノミー 企業がやるべきSDGs実践の書」でABDに挑戦しました。
最初にABDの練習を兼ねて、書籍の「はじめに」の部分をそれぞれで読んでまとめて、3〜4人のグループで自己紹介と感想を共有しました。
同じ文章を読んでも、人によって着眼点や捉え方が違うことを改めて認識しました。
サマライズ(担当パートを読んで要約)
「サーキュラー・エコノミー 企業がやるべきSDGs実践の書」は序章と終章を含めて10章に分かれています。
それぞれ興味のある部分を選び、25分間で読んでまとめていきました。
時間内に読んで発表しなければならないということで、参加者は集中して担当する章を読み込んでいました。
リレー・プレゼン(発表)
各章を読んだ参加者が、2分間で要約した内容を発表しました。
序章 リニアからサーキュラーへ―新たなビジネスモデルと日本の現状
- リニア・エコノミー:使って捨てる。
- リサイクル・エコノミー:捨てるまでの時間を長くする。
- サーキュラー・エコノミー:捨てずに使い続ける、循環させる。
サーキュラー・エコノミーの三原則
- 廃棄物を生み出さないモデル
- 製品と原材料を使い続ける
- 自然システムを再生する
「ゆりかごから墓場まで」ではなく「ゆりかごからゆりかごへ」という意識で、地球から地球に戻していくことが目的で、欧米では認証制度が創設されているが、日本はリサイクルに注力していて、サーキュラーの考え方はあまり浸透していない。
既存の商品を循環型にしていくために、技術的リサイクル・生物的リサイクルに分けてバタフライ・ダイアグラムで考える。
リニア・エコノミーは1社で完結するが、新しい製品を買ってもらうために、商品の廃棄ペースが早くなり、資源の枯渇につながってしまう。
サーキュラー・エコノミーでは、循環型サプライチェーン・シェアリング・サービスとしての製品、製品寿命の延長、資源の回収とリサイクルという5つのビジネスモデルがあり、1社だけでは成立しないため、他の企業や地域を巻き込んで取り組む必要がある。それらは継続的な関係性の構築や、商品の耐久性・修理のしやすさにもつながり、デジタル技術を活用することで経済的価値を高めることができる。
第1章 製品に「サービス」という価値を付加する
家電メーカーのフィリップスは、照明器具を販売するのではなく使った分だけ「明るさを売る」というサービスを提供している。
タイヤメーカーのブリヂストンは、走行距離に応じて料金を請求する「タイヤを貸すサービス」を提供している。
エレクトロラックスは、清掃した面積によって料金が発生するロボット掃除機のサブスクリプションを行なっている。
日本の空調メーカーであるダイキンは、アフリカなどで料金を支払った分だけ使用できるプリペイド型のエアコンサービスを展開している。
これまでのリニア・エコノミーでは、大量に作って大量に売る、商品を作り続けなければならず、物流も疲弊し、企業としての持続性がない。業界の大手がサーキュラーに転換することで、他の企業も追従して業界全体が変わっていくことも多い。
フィリップスの事例でいうと、LED照明への切り替えは初期投資が必要となるが、使った分だけ支払う形でメンテナンス費用も含まれているのであれば、消費者としても導入しやすい。企業としても「売って終わり」ではなく、メンテナンスなどでユーザーと繋がり続けることにも大きな意味がある。製品を回収することで使用感や故障箇所が把握できて、より良い商品開発につなげることができる。
家電は「10年で壊れるように作られている」という噂もあるが、サーキュラー・エコノミーでは新しい商品を売る必要がなくなり、使い続けてもらう商品が作られるようになる。
第2章 斬新な発想で、廃棄物の概念を変える
新素材の開発、CO2排出の少ない素材などが多く使われている。
ナイキでは、循環型デザインとサステナブル素材で炭素と廃棄物の排出量をゼロにすることを目指し、”Move to Zero”と明文化している。
アディダスは、2024年までに全商品を再生プラスチックに、2030年までには天然素材で再生可能+生分解性で作ることを目指している。
第3章 ゼロカーボンで覇権を争う米国の巨人たち
GAFAMといった世界的企業でも、危機感を抱いてサーキュラー・エコノミーに戦略的に取り組んでいる。サーキュラー・エコノミーを実現することで経済システムの覇権を握る、それにより投資家から評価を得る、グローバルリーダーとしての使命を果たす、という3つの視点がある。各社の具体的な取り組みは次のとおり。
Google:会社内の電力を100%再生可能エネルギーで賄う。サプライチェーン・パートナーのCO2を抑制する。
Apple:地球から何も採らずに製品を作る。資源の再利用と生産の効率性向上。Microsoft:2030年までに100%再生可能エネルギーにシフトする。植林などでCO2を回収してカーボンネガティブを目指す。
Amazon:配送車両のEV化、バイオジェットの活用によりCO2半減以下。
Facebook:100%再生可能エネルギーへのシフトする。情報発信分野でも貢献する。
第4章 プラスチック、「責任ある消費方法」を模索する
再利用されているプラスチックはわずか9%しかない。
容器を繰り返し利用するサービスを提供するプラットフォーム”Loop”が広がりつつある。ユーザーを満足させなければ新しいサービスは浸透しない。
サーキュラー・エコノミーは一社では完結できない。
テラサイクルは、「捨てるという概念を捨てよう」をテーマに、これまでリサイクルされていなかったあらゆるものを余すことなくリサイクルしている。
ユニリーバでは、「プラスチックがゴミにならない未来」を目指している。
エレン・マッカーサー財団は、マイクロプラスチックが海に流れていくのを抑えるために新プラスチック経済と呼ばれるイニシアチブを先導している。
人口一人当たりの廃棄量を見ると、日本はアメリカに次いで世界で2位となっている。生活者である私たち一人ひとりが日々の暮らしを見直していかなければならない。
第5章 「環境の破壊者」ファッション業界の変貌
ファッション業界は、CO2排出量の10%を占めている上に、大量の水を使う、作りすぎた商品を多く廃棄し、洗濯からマイクロプラスチックが流出するなど「環境の破壊者」と言われている。
ハイブランドは環境破壊のイメージを払拭したがっている。
グッチなどのブランドを有するケリング・グループは、環境負荷の数値化(環境損益計算=EP&L)に取り組んでいる。事業活動から生じる環境損失を測定し、具体的な改善に着手するとともに、CO2削減などの評価も可能にしている。
ハイブランドは毛皮や羽毛を多く使っていたが、先進的なデザイナーによりエシカルなファッションが持ち込まれて、評価されて服飾業界にもサーキュラー・エコノミーが広がった。
環境問題に舵を切り始めた理由として、今後の購買層であるデジタルネイティブなミレニアル世代・ゼット世代の環境意識が高いため、環境問題に取り組まないと売り上げが伸びないということが挙げられる。
第6章 リソース・ポジティブと食ビジネス
食業界の課題として、プラスチック容器やフードロス、食の安心・安全等について書かれている。
スターバックスは、地球から採取する資源よりも多くを地球に戻していく「リソースポジティブ」という考え方を掲げている。
それを実現するために、環境に優しい植物由来のメニューを増やす、使い捨てから再利用へ、再生型農業・森林再生事業への投資、店舗の運営や製造・配送なども環境に配慮するといった戦略を打ち出している。
2030年までに、全世界の店舗でCO2排出量を半減する、直営店や生産で使用する水の50%を水不足の国や地域に補充する、廃棄物を50%削減して容器を再利用するといったことを行うこととしている。
中でも「Stop the Plastic」として、2020年までにプラスチックストローを全廃してストローレスの容器を採用したり、代替材料(植物由来)を用いることに取り組んだ。
世界に約3万店舗を有するスターバックスの取り組みは世界的なうねりを生み出し、食ビジネスの変化につながっている。
ミツカンは、サーキュラー・エコノミーブランド「ZENB」を立ち上げ、可能な限り材料を全部使うことに取り組んでいる。例として、とうもろこしは芯に栄養があり、添加物不要で体にも良い。それを使うことでゴミも出さない。
食は身近な存在だからこそ、時代錯誤なことをしていたら消費者は離れていくため、時代に即した取り組みが求められている。
第7章 家具、寝具、信頼できる暮らしまわりの製品
イケアは手頃な価格で提供していたが、資源枯渇で原材料が高騰して成立しなくなると言われていて、全てのデザインをサーキュラー・デザインに変更していく方針を示している。
例えば、ソファのパーツを120から13に減らし、買い手は組み立てやすく、作り手は管理しやすく製造過程の環境負荷を低減できる。
収納箱はライフスタイルの変化に合わせて買い替えていたが、パーツを追加で買うことで自由に組み合わせて変化させることができ、引っ越し等にも対応できるようにしている。
ネジや釘を少なくして分解・組み立て・修理しやすく、長く使えて捨てたいと思わせない家具を作ることを目指している。
また、物を売るだけではなく、定額で家具を貸し出すサービスも検討している。
サーキュラー・エコノミーはコストがかかるのではないかと思われるが、余計なコストや環境負荷を省くことで、金額も抑えられる。
第8章 紙の無駄にビジネスチャンスあり
印刷業界の市場規模は、この30年間で8.9兆円から5.2兆円に減少している。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)はサーキュラー・エコノミーと深く関わっている。
同じものを大量に印刷して大量に届けて大量に廃棄する形であったが、DMは60〜90%が見られずに捨てられていると言われ、同じ内容のものはほとんどの人に適したものではないということができる。
個別の内容で少量を印刷して興味のある人に届けることで、一つ一つの印刷物の価値を高めることが求められる。
注文はWebで受けることが増えているが、カートから戻した人にすぐにDMを送ると買う可能性が高いということもあり、メディアをミックスして活用したり、ネットワーク化して分散するといったことが新しいビジネスモデルとなりつつある。
印刷業自体も適地適量で分散化が進むと思われる。
地域にあった内容で関連産業も含めて地域活性に寄与し、環境と経済の両立が実現できる。
終章 日本の産業と、サーキュラー・エコノミーへの移行
日本は昔から環境に優しく、物を大切に扱う「もったいない」の思想があり、江戸時代は循環型の暮らしをしていた。
これからは企業の成長戦略として活用することが求められる。
大企業が取り組むとインパクトは大きいが、中小企業の方が取り入れやすい面もある。従来の考えからの転換が必要で、社員や取引先の理解、情報共有も必要となる。
上田市にあるアトリエデフという住宅メーカーは、社員が30名くらいの小さな会社ながら、日本の森林のために国産材を使ったり、建材は使えるだけ使って最終的に土に帰るものを選ぶなど、業界の非常識を社内の常識に変えている。
企業は消費者の動向を気にしすぎている傾向があるが、消費者に気づきを与える責務が企業には求められている。
ダイアローグ(対話)
各章の要約を聴き、それぞれが気になった内容や深く聴いてみたいことなどを
お知らせ・閉会
次回は11月11日(木)に、石垣島と白馬村の子どもたちがそれぞれの地域の環境の変化や地域の課題について意見交換をする予定です。
もちろん高校生以外も大歓迎!ぜひご参加ください。
配布資料はすべてデータで、紙に印刷することはほとんどなかった。
SDGsの観点で言うと、パートナーシップについては企業として力を入れていると感じる。