エネルギーシフトで冬を守る!雪国での屋根ソーラーパネル設置の可能性

2019年5月に白馬村で開催された「気候変動&地域経済シンポジウム」では、最も効果的な気候変動・地域経済対策として自立分散型自然エネルギーへの転換の重要性が語られた一方で、参加者のアンケートからは太陽光発電への期待や不安など様々な疑問が伺えました。

「冬の大雪に耐えられるの?」「廃棄物の環境負荷は?」など、太陽光発電の不安や心配ごとにお答えするべく、専門家を招いて勉強会を開催しました。

イベント概要

日時:2019年10月6日(日)14:00〜16:30 ( Open 13:30 )
場所:白馬ノルウェービレッジ(白馬ジャンプ競技場隣)
主催:Protect Our Winters Japan、自然エネルギー信州ネット、Hakuba SDGs Lab
協力:シバクサ電器、しくみ株式会社、パタゴニア
*積水ハウスマッチングプログラムの支援を受けて開催しました。

開会&ゲスト紹介

主催者を代表してPOWの脊戸柳さんから、開催の趣旨をご説明いただき、ゲストの3名をご紹介しました。

  • 高橋真樹 氏(ノンフィクションライター/映画「おだやかな革命」アドバイザー)
  • 丸山浩司 氏(シバクサ電器/ 新エネルギー革命会理事/自然エネルギー信州ネット会員)
  • 浅輪剛博 氏(自然エネルギー信州ネット事務局長)
(1) 気候変動と自然エネルギー – ノンフィクションライター 高橋真樹 氏

はじめに、高橋真樹さんから、太陽光発電の概要についてお話いただきました。

  • 電力自由化は、価格だけでなく電源(発電方法)を選べることに意義がある。
  • 日本国内の住宅の9割以上が1999年以前の基準で建築されている。(断熱性能の低い環境で冷暖房を多く使っている)
  • 海外では気候変動・大気汚染・地域の自立・防災減災の観点からクリーンエネルギーが主流になりつつある。(石炭発電をしている企業は相手にされなくなっている)
  • 北欧やドイツでは「地域の資源は地域の人たちが活かして恩恵を受ける」という考えのもとでエネルギーシフトが進んでいる。
  • 積雪地域である福島県喜多方市でも大和川酒造当主の発案により会津電力を設立して太陽光発電を実施しており、雪国でも実績がある。
  • 太陽光発電のメリットは、設置が簡単で二酸化炭素を排出せず、災害時でも自立発電できることで、デメリットは天候(日照)に左右される、エネルギー密度が低いこととされているが、調整することで対応は可能。
  • 廃棄については、パネルの寿命を20年と換算すると2030年代に80万t/年の廃棄物が出ると言われているが、技術的には95%リサイクル可能である。現時点では廃棄量が少ないため採算が取れないが、設備1台で10MW/年分の処理が可能と言われている。最大の課題は政府の制度設計。リサイクルに係る法律が整備されれば、家電や自動車と同様、リサイクル事業もスムーズに進む。
  • パネル自体は30〜40年使えるとも言われているため、リユースも可能である。経年により発電量が落ちることもあるが、それほど極端に低下することはない。
  • 一箇所に集中的に設置すると発電時間帯も重複するため、蓄電の必要が生じる。米国カリフォルニア州や欧州のいくつかの国では再エネがベースロード電源となっており、太陽光+風力という組み合わせも多い。(全国で曇り+無風ということはない)

(2) 雪と太陽光 – シバクサ電器 丸山浩司 氏

続いて、地域密着で気軽に相談できる「まちの電気専門店」として中野市を拠点に創エネ・蓄エネ・省エネを通じて地域に貢献するシバクサ電器の丸山さんにお話いただきました。

  • 積雪1mくらいが製品・施工の基準となる。
  • 季節ごとの発電割合は、春と夏で6割超、秋と冬は4割弱程度。(冬の日照が多少見込めなくても、それほど大きな影響にはならない)
  • 各メーカーでもフレームデザインや補強バー等により積雪対策を施しており、2mの積雪にも耐えられるものもある。
  • 積雪対策として、支持点を増やすことや、パネル間の隙間を無くして落雪しやすくすることが挙げられる。
  • パネルの上はかなり滑りやすいため、雪下ろし作業は危険を伴う。
  • 積雪の影響を受けない壁へのパネル設置は、屋根の発電量の50〜60%程度と思われるが、雪の反射があれば発電量は増える。

(3) 太陽光発電の制度はどうなる? – 自然エネルギー信州ネット事務局長 浅輪剛博 氏

最後に、自然エネルギー信州ネットの浅輪事務局長から、制度に関してご説明いただきました。

  • 現在の固定価格買取制度(FIT)では、住宅用(10kW未満=パネル30〜40枚程度)は24円(税込)/kWh、10年間で自家使用を優先して余剰を売電する形となっている。来年度は、数円程度価格が下がる可能性がある。
  • 現在の価格で売電するためには、2020年3月31日までに認定を受ける必要があり、11月8日までに送配電会社(中部電力)に申請をする必要がある。(中部電力の審査・認定後、経産省に申請し、審査・認定を受ける。(後日申請取消は可能)
  • すでに買取価格が電気代よりも安くなっているため、今後は電気給湯器の普及や電気自動車への蓄電など自家使用モデルが増えてくると思われる。
  • エネルギーはシェアできた方が設備が少なくて済むため、送配電網などシェアの仕組みは残し、風力など他の発電と調整していく社会が理想的である。
  • 太陽光発電ユーザー支援サイト「ソーラークリニック」に、アメダスの日照時間等をもとに日射量を算出し、年間の推定発電量が掲載されているが、
    上田市:1,462kWh
    白馬村:1,261kWh
    東京都:1,173kWh
    ドイツ:930kWh
    という数値であり、東京よりも白馬の方が発電量が多いという結果になっている。
(4) 質疑応答

Q. 太陽光パネルの強度はどれくらい?
A. メーカー・製品にもよるが、車のフロントガラスと同じくらいのイメージ。尖ったものには弱い。

Q. 気温が低いと発電量が増えるの?
A.  温度が上がると電子の流れが悪くなる。鬼無里では冬に最高瞬間出力を記録することもある。

Q. 雪国での保証は?
A. パネルだけでなく架台など部材の保証もあり、屋根の材質や角度によっても異なるため、一概には言えない。保証の内容もメーカーによって異なるため、事前に確認しておくことが重要。

Q. 屋根の大きさや形状に合わせて設置するべき?
A. 大小のパネルを組み合わせることは可能だが、大きさや形をカスタマイズすると割高になる。屋根の端は風の影響を受けやすいため際まで設置するのはリスクがある。新築であれば屋根全体がパネルということも可能。

Q. 屋根パネルの設置にあたり最小面積はあるのか。
A. 1枚だけでも発電・利用は可能であるが、採算を考えると10枚くらい設置することが多い。

Q. パネルを設置することで屋根の補強にもなるのか。
A. 屋根の状況にもよるが、「住宅設備の一つ」という考え方から、まずは屋根をしっかり補強することが前提となる。

(5) 閉会

上田市民エネルギーの藤川まゆみさんから、「家庭から一年間に排出される二酸化炭素約5tのうち、約半分が電気によるものですが、貸家や事情により屋根ソーラー発電ができない方でも、電力会社の選択や『相乗りくん』でエネルギーシフトを実現していきましょう!」とのお言葉をいただきました。

ご登壇いただいたゲストの皆さん、ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。

小規模自立分散型のエネルギーの実現に向けて、これからも屋根ソーラー発電の勉強を重ねながら、設置件数を増やしていきましょう!